28 ページ28
お寺に併設されている休憩所の端っこに並ぶかたちで座って、お姉さんの彩られたピンクのキラキラした爪に、麦茶の入ったグラスの水滴がついているのが視界に入った。
予想通り彼女がお墓参りを済ませているうちに俺のTシャツは速乾、事なきを得て今ここに来たというわけだ。
「あの、ええっと、どこから話したらいいんでしょう」
「じゃあ、その...いきなりなんですけど、お墓参りに来られていたのは」
「ああ、あれは父なんです。まだ、一周忌で。
がんだったんですけど、父と一緒に生活していたのですぐに大学を辞めて、とにかくお金を稼ぐために今は夜の仕事をしてます」
「......そうなんですね」
持ち物や服装から滲み出る高級感と派手さがないまぜになったような雰囲気に、その一言でやっと納得する。接待系のお仕事の人だったのか。
「さっきの涙は、お父さんのことで？」
「ああ...あれは、その...」
まだ1年しか経っていなければまだ気持ちの整理が追いつかないだろう。
そう思って尋ねれば、意外なことに彼女は言葉尻を濁した。
「......？」
「最近、よく会ってる人がいて。ちょっと、どうしていいか分からなかったから、父に相談に来たんです」
「あー、その気持ちわかります。俺も１年に一回しか来れてませんけど、よく話しかけちゃうんで。その方、お客さんとかなんですか？」
「たまたま、会ったというか、なんというか。
......年下の子なんですけど、すごく面倒見が良くて、わたしがお客さんに水をかけられたときにそれを咎めにわざわざ介入してきたんですよ」
「ええ？！」
「あっはは、面白いですよね。そんなことしても何の利益にもならないのに、彼はいつもそうやってあれこれ心配してくるんです。
もうちょっと自分を大事にしろって」
「な、なるほど..やっぱり凄いお客さんもいるもんなんですね」
「ほとんどは普通のお客さんですよ？でもそれからずっと、心配され通しで。子供じゃないんだからって、思うのに......」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 209人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
灯莉(プロフ) - Mikannuuuuさん» Mikannuuuuさん、コメントありがとうございます！他の作品も読んでくださったんですね。いいところに気づいてくれました……( ＾ω＾ )ぜひお楽しみにしていただければ幸いです。 (4月23日 8時) (
レス) id: 63f20e3e12 (このIDを非表示/違反報告)
Mikannuuuu(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます！一気読みしたのですが尊すぎて読むのが楽しかったです。他の話の伏線かな？と思うところもあって他のお話も楽しみです！ (4月23日 8時) (レス) id: 79eedeb4c2 (このIDを非表示/違反報告)
灯莉(プロフ) - 愛結さん» 愛結さん、嬉しいコメントをくださったのにこんなレスで申し訳ないのですが、おかげさまで編集のミスに気づけてラスト2話を公開することができました...！ありがとうございます。本当に感謝しかありません。こんなレスでほんとにすみません😱 (4月22日 23時) (レス) @page45 id: 0a43491d63 (このIDを非表示/違反報告)
愛結(プロフ) - 主人公がどうなったのか気になりすぎて続編が欲しすぎます🥲🥲面白い作品作っていただいてありがとうございます！！ (4月22日 23時) (レス) id: 6e8b454d13 (このIDを非表示/違反報告)
灯莉(プロフ) - ぴのさん» ぴのさん、素敵なコメントありがとうございます( ；∀；)ふたりの行く先を見守っていただけたら幸いです。 (4月20日 20時) (レス) id: 0a43491d63 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：灯莉 | 作成日時：2024年3月22日 23時
