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後にも先にも人の前で涙を流したのはあの時だけだ。
クールビューティだなんて巷では言われる私が、
樹くんの前でだけ泣いたのだ。
それから樹くんには特別な感情を抱くようになった。
だけど、彼の好みとは正反対であろう自分。
SnowManが結成の時に加入してからは、
仕事でも一緒になることはあまりなかった。
その後SixTONESが結成され、
一緒に仕事をする機会は増えた。
だけど、いざ樹くんを目の前にすると
思うような言葉が出ない。
結局、なかなか話せないまま、今日まできている。
たまに話せた時はスケジュール帳に
ハートを書き込んでしまうくらい浮かれる自分が情けない。
そんな彼のことを好いている人物は私だけではない。
SixTONESの紅一点、雪白Aだ。
雪白ちゃんはある日突然、事務所に所属してきた。
どんな経緯があって入所したのか。
そのあたりは謎なままで。
ちょうどSixTONESが結成される時期と
被っていたこともあり、入所してすぐSixTONESの
メンバーに選ばれるというスーパーエリート組だ。
SixTONESのメンバーは戸惑っていたけども、
彼女の持ち前の明るさ、歌のセンスによって
すぐにみんなに受け入れられて。
そんな彼女を後輩だけど尊敬している。
年齢も、入所歴も下な彼女だけど、
お互い唯一の女性アイドルとして頼りにし、
大切な仲間だと思っている。
そんな共通点ゼロの私達が同じであること。
それは好きな人が同じであることだ。
実際に聞いたことはないけども、
雪白ちゃんはSixTONESの中でも
圧倒的に樹くんと仲良くて。
樹くんと話している時の彼女は嬉しそうで
イキイキしている。そんな姿を見ると
いつも胸が苦しくなる。
あぁ、きっと彼女は樹くんのことを好きなんだろうな。
そのことに気づいてからは彼女と心の底から
楽しく話せなくなってしまった。
渡『A。また1人の世界に旅立ってる。』
「翔太。そんなことないって。」
ぼーっとしていたら私の隣に翔太が座った。
樹くんと雪白ちゃんの様子を見ていられなくて、
私は翔太に顔を向け、話を始めた。
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作者名：しょこら | 作成日時：2024年4月8日 3時
